Wednesday, 23 July 2008

Japan Calling... Can anyone translate this? (web link here)

 今回紹介するアルバムは、ロンドンを拠点に活動する『デルタ・サクソフォン・クァルテット』の新作で、ジャズやロックという境界を飛び越えた意欲的な作品群をNYより発信しているMOON JUNEレコード2007年度作品である。レーベル・オーナーのレオナルド・パヴコヴィッチ氏は、旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェコビナ)出身でイタリア在住歴が長く、プログレッシブ・ロックとジャズをこよなく愛する。彼は、コンサート・プロデューサーとしての顔も持っていて、アラン・ホールズワースやミロスラフ・ヴィトゥス、さらには往年の“イタグレ”(イタリアン・プログレッシブ・ロック)の名グループ達、PFM、バンコ、アル・ティ・エ・メスティエレ等の日本及びアメリカ・ツアーを計画/実行してきている。おりを見てもっと詳しく紹介したい。
 プログレ好きは直ぐにピーンと来るだろうが、本作は、カンタベリー派の最重要バンド『ソフト・マシーン』へのトリビュート作だ。1曲に元ソフト・マシーンのヒュー・ホッパーも参加。自作の“ジャズ・ロック”の名曲「フェイス・リフト」で得意のファズ・ベースとループを聞かせてくれる。ホッパーは、『ソフト・マシーン・レガシー』という元メンバーを中心にしたバンドで、MOON JUNEレコードを中心にコンスタントにアルバムを発表してきている。もう一人のゲストとして、『モット・ザ・フープル』を始め、70年代ブリティシュ・ロックを代表するバンドを遍歴したキーボード奏者モーガン・フィッシャーも参加している。しかし演奏の中心は、あくまで『デルタ・サクソフォン・クァルテット』の4人である。
 実を言うならば、過去に聞いた“サクソフォン・クァルテット”の作品群でこれといって感動した例は無いし(このジャンルを牽引してきた『ワールド・サクソフォン・クァルテット』や『ローバ・サクソフォン・クァルテット』の“代表作”は一通り聴いている)、トリビュート作という企画モノは余り趣味に合わない。まして『デルタ・サクソフォン・クァルテット』の名を目にするのは、今回が初めてとあって、このアルバムに対する期待はほとんど無かった。
 しかしである。手に入れて数ヶ月、僕はこのアルバムをもう何度となくCDプレイヤーにかけた。もう少し前に知っていれば、絶対2007年度のベスト・アルバムに選んだであろう。
 先ず、このクァルテットが持つ “典雅”とでも形容したくなる気品を決して損なわないアンサンブルに耳を奪われる。インターネットで見つけた資料によると、彼らの結成は、1984年。フィリップ・グラス、スティーブ・ライヒと言ったミニマリズムの作曲家や、イギリスのジャズシーンを代表する作曲家・バンドリーダー=マイク・ウェストブルックの作品を取り上げた意欲的なアルバムを発表してきたらしい。
 その素養と経験は、収録曲の自発性を損なわない効果的なアレンジ、また色彩感に飛んだ多彩なヴァリエーションに直結している。特に、ヴァリエーションの豊かさは「表現に幅を着けるのが難しい“サクソフォン・クァルテット”というフォーマットによる作品」と言う事実を考えれば、賞賛に値する。
 具体例を挙げれば、ECM的静寂間を慕ったフリー・インプロヴィゼーションの小品(「Dedicated」他)、サイケデリックな攻撃感を慕ったジャズ・ロック風演奏(「Facelift」他)、バロック的なクラシシズムを感じさせる作品(「Outrageous Moon」他)。そんな中で、特に印象に残ったのは、(個人的に)これぞ『ソフト・マシーン』といえるミニマリズムな「Floating World」と、イギリス以外からは到底現れ得ないであろうパストラルなリリシズム(田園風景的情緒)を切に感じさせる「Aubade」と「Everything Is You」。特に「Everything Is You」は、近年稀に見る名アレンジ・演奏だと思う。同じくイギリスの生んだプログレの巨人『キング・クリムゾン』の最もジャズ/クラシック色の強いアルバム『アイランド』中のオーボエと弦楽器による前奏曲「Song of the Gulls」(名曲です)を思い出した。
 ECMのスティーブ・レイク氏が最大限の賛辞を送っているが、それに大いに納得できる素晴らしいアルバムだ。ECM/プログレ/クラッシック・ファン及び、その他のJT誌読者の皆さん、是非トライして見てください!NOBU STOWE JT

(須藤伸義/在バルチモア)

*『Delta Saxophone Quartet − Dedicated to you… but you weren’t listening』は、アマゾン/ディスク・ユニオン等で購入可能。
**バンド/レーベルの詳細は、以下のホーム・ページで:
DELTA SAXOPHONE QUARTET (www.deltasax.com)
MOON JUNE RECORDS (www.moonjune.com)

0 comments: